SCC19で発行予定の新刊のお知らせです。
*Holy Junk(05)
(A5/オフ/72P/500円(予))
百合小説本です。
高橋「恋を探しに」
ゆるいファンタジーもの。
ゲェト管理局のアタッカー、リンデンにタンポポという名の新しいバディがやってきたんだけど……。
全員片思いです(残念!)
ゲスト様もお呼びしています。
和巳さん「今、ここにいるということ」
いつもの女子校を舞台にした読み切りシリーズ。
生徒会の先輩と後輩のしみじみ・ほのぼの。
りーるーさん(リリ舎)の大人百合漫画も2P提供していただいています。
「恋を探しに」本文より抜粋。
「辞令よ」
そんな可愛らしい見た目を裏切るように、局長の話し方はクールだ。
「……は?」
「辞令っていったのよ」
「……今時期ですか?」
こんな時期に、辞令が出るのは珍しい。しかも、あたしはまだ任期がたっぷり残っていて……。
「タンポポ、おいで」
あたしの不審顔なんて、つらっと無視して、局長はあたしの背後に向かって声をかけた。
えっ? と思って振り返ると。
ドアの傍に女子が一人立っていた。
さっき部屋にはいってきた時、あたしはドアをばんとあけ、そのままずかずかと局長席の前まで来たので、その存在に気がつかなかったみたい。
金色と栗色の中間みたいな色の長い髪を二つにわけて、下の方でしばっている。
肌は白かったけど、局長みたいな病的な白さじゃなくて、もちょっと健康そうな感じ。
ノースリーブの丈の短い上着をきていて、お腹がちらりと見える。そしてショートパンツ。
ブーツは膝下までの長いもので。
あ、アタッカーだと、すぐに思った。
こういう活動的なスタイルは、管理局では大抵アタッカーだからだ。
今日のあたしも、似たようなスタイルで。彼女とちょっと違うのは、あたしは黒いタンクトップの上に、黒い上着を羽織っていること。あとショートパンツってのは同じだけど、タイツはいてて、ブーツは短め。
彼女は、局長に呼ばれて歩いてやってきた。
「紹介するわ」
局長が言った。
「今日から貴女のバディとなるタンポポ」
「はあーーー!?」
タンポポという名らしい彼女に向けていた視線を、あたしは小憎らしい上司に向けた。
「バディってそんなの聞いてないし!」
「今言ったしぃ」
甘えるような声で、憎たらしい上司はそう言った。
バディっていうのは、アタッカーは大抵二人一組で行動するんだけど、その相手同士の事をいう。
あたしは、これまでバディがいなくって。
それは単純に、アタッカーが奇数人数しかいなかったってこともあるし、あたしと組みたいって子も現れなかったから。なんか文句ある?
それが突然……ねえ……。
ふっと彼女を見ると、あたしのほうを見ていた。
むすっとしている訳でもないし、にこっとしている訳でもない、なんだか曖昧な表情。
なんだろ、うまく言えないけど変な感じ。
つい、じっと見てしまった。でも彼女は目を逸らしもしない。……変なコ。
「ともかく辞令は発令されちゃったからね」
声だけは可愛いけど、ふてぶてしい感じで局長が言った。
「それにしても、こんな時期に……あ」
あたしはふと思い立って、聞いた。
「もしかして、この子もあたしと同じ……」
「違うわよぉ」
局長は、ちょっと拗ねたように唇をとがらせた。そんな仕草は本当に可愛いんだけどね。だけどね。
「タンポポは、私が知人から直接預かったの。局長権限で辞令を出したのよ」
「無茶苦茶だ!」
さすがにこれには抗議せざるを得ない。
「何言ってるのかしら。リンデン、貴女も似たようなものでしょう? とにかくこれは局長命令よ。本日より辞令は発動。いいわね」
「う……ぐ……わかりました……」
「タンポポ。このリンデンが貴女に仕事を教えてくれるわ。判らないことは何でも聞いてね」
「はい」
あ。
初めて喋った。少し幼い声だった。見た目年齢でいえば、あたしと一緒くらいみたいだけど……。
ついタンポポのほうを見てしまって、目が合う。しょうがないので、挨拶をした。
「あー……リンデンっていうんだ。まあ、よろしく」
「よろしくお願いします。リンデンさん」
タンポポはバカ丁寧に頭を下げた。
「リンデンでいいよ。バディは対等だからさ」
「リンデン」
「そう」
タンポポはうんうんと頷いている。なんかちょっとトロそうな子だけど、大丈夫かなあ。
そんなあたしたちの様子を局長はにやりと笑みを浮かべて見ていた。