9/2のCOMITIA101で新刊が出ます。
*「レディオスター(もしかして:デート)」
(A5/28P/オンデマンド/300円)
5月に発行した「レディオスター(もしくは王子様でお姫様)」の後日談です。
今回の本、単体で読めるようにはしてないので(話自体は完結してますが)、前の本を読んだことある方向けです。
前のお話から三ヶ月後。
雑用バイトを続けていて佐登に明良からメールが来て……。
今回はりーるーさんにゲストにきてもらいました!
3Pのコメディ漫画を描いてくれました。
歌音がすごい可愛いvv
装丁も前回と同じく空野さんにお願いしちゃいました。
気軽に読める内容となってますので、前回の本を気に入ってくれた方は見に来てください。
※本文より抜粋
渋谷で一番新しいビルは訪れている人も華やかな何かを振りまいていて、そのことが余計に佐登を焦らせる。
ーーいやいや、明良さんだって突然スケジュールが空いたわけで誘ってくれただけありがたいっていうか。
と、考えたところで。
はて、どうして誘ってくれたんだろう?
と、思い当たった。
「佐登ちゃん! こっちこっち!」
出入りする人が多い中でも、その声はすっとはいってきた。
エレベーターが着いてすぐの入口の傍に、彼女はいた。
佐登は慌てて駆け寄る。
「すみません、お待たせしました」
「ううん、突然誘っちゃって。来てくれてありがとう」
にっこりと風無明良は微笑んだ。
以前よりすこし伸びたボブ。生成りっぽい色の大きめのオーバーブラウスに、深いグリーンのカーゴパンツ。足下はヌーディーカラーのパンプスだった。バッグは大きめのナイロン製の軽そうな黒いトート。基本的に声優という人種はいつも大きめのバッグを持っている。持ち手のところにオリエンタルな柄がはいったスカーフが巻かれていた。
久々に会えた明良は、相変わらず綺麗でそしてこのビルに負けないくらいキラキラしている。
と、佐登は思った。
「お、お久しぶりです」
佐登は頭を下げた。
ほんとうに久しぶりだった。
三ヶ月前のあの番組の最終回以来の再会だった。
明良が出演しているアニメ「ほしくずメモリア」のラジオ番組に、佐登は成り行きで構成作家として関わることになった。
明良とはそこで知り合い、いろいろあって……。
あれからすでに三ヶ月。番組が終わってからは、普通に会社で事務バイトとして働いていた。
明良とはメールで時折連絡はしていたが、直接会ったのはその最終回の日以来だったのだ。
なにしろ相手は人気声優。「ほしくずメモリア」のスマッシュヒットでイベント出演も増え、忙しい毎日を送っているという話は、噂で聞いていた。
「仕事、大丈夫だった?」
すまなさそうに明良が聞いてくる。
「はい。今日は暇だからって早退していいよって先輩が」
「そっか、早退、させちゃったんだ。ごめんね」
「いえいえ」
佐登は慌てて首を振った。
「今日は社長もずっと外で、暇だったのは本当だったんです」
「大森さん、お元気?」
「はい」
「そっか……」
明良は人の出入りしている大きなガラス張りの入口を見た。
「今日は代々木で収録してたんだけど、夕方からの収録が昨日になってバレちゃってね。そういえば、ここに来たことなかったなって思って」
「わ、私も初めてです」
「そうなんだ! よかった。付き合わせちゃってあれかなって思ったけど、佐登ちゃんにも会いたいなって」