3/15のHARU COMIC CITY14で、antipastoの新刊が出ます。
配置 東2ホール ハ24b antipasto (ジャンル・創作)
http://www.antipasto-caffe.com/
新刊
「Vie Durant*undo~duet」
(A5/オフ/68P/頒布価格500円)
Vie Durant*undoの本、第二弾です。
漫画は榊さん、
私は小説「ストレイシープ」を書きました。
漫画も小説も、衛夢(えむ)祭りです!w
(表紙の金髪の男の子です)
榊さんの漫画は、衛夢が吸血鬼になった頃の話、私の話は時代がぐぐぐぐぐっと進んで、弥衣(びぃ)も仲間になっているデュラン七人時代の話です。
表紙の通り、小説は、馨(けい)と憂(ゆう)も出張ってます。
デュランお子様組登場。
すごい好きな年代の男の子(ショタともいう)のお話が書けて、楽しかったです。
お子様組とかいっても、何百年も生きているワケデスガ。
今回の本のタイトルは「duet」
二重奏。
今回の本は小説がもう一つ。
和巳さんの「LR」第一話、というのがはいってます。
いつも「Holy Junk」にゲストに来てもらってる和巳さんにも、デュランに参加してもらいました。
LRは、時影たちデュランとはまた違う「デュラン」の物語。
とある男子高の寄宿舎を舞台にしたお話です。
ルキーノとリカルドという、ふたりの男の子が出会って……。
ルキーノとリカルドのイラストは榊さんのサイトでみれます。
「LR」は実はもともと舞台で発表されたお話で、和巳さんにはその台本をもとにしつつも、新たに設定などなどを加えてもらって、新しく小説として作っていただきました。
デュランの準備をしていた昨年の秋に、antipastoの加賀屋さんから「LRってお話もあるんですよ」と言われて、台本とか設定をみせてもらった時に、
「これは……私が書くより、和巳さんのほうが絶対いい!」
と、天啓のようにひらめきw
和巳さんに
「こういうお話があるんだけど、和巳さんに書いてほしいんだ~」と資料とともにメールしたんだけど、快諾していただけまして。
小説書く前に、何度も何度も設定などを確認して、書いてもらいました。
ふたりで、デュランに出てくる子たちのことを、たくさん考えました。
こういった形で小説をつくるのは初めてだったので(それは和巳さんも)いろいろ大変だったけども、今回、こうやって形になって本当に嬉しい。
わたし的にはリカルドがすごいかわいくて萌えです。
昔から、和巳さんの書く男の子すっげ好きだったんで(もちろん百合も好きだけども)、いやー、お誘いしてよかったな~と。
GJ、自分!って気分です。
時影たちデュランと、ルキーノ&リカルドの「LR」編の二つのお話。
なので今回の本はduetなのです。
またこれで、undoの世界が広がるといいなーと思います。
XOICは!?とかバジリスクも早くださなきゃ!とか、デュオ様も~~とか思ってるんですけど、まー、おいおい頑張りたいです~。
あとundo用に新しいキャラも何人か作ったので、その子らも早く出してあげたいですね。
「決戦はヴァレンタイン」もめちゃめちゃがんばり中です。
そろそろ何か公表できるといいんですが……。
今はシナリオやるので、手いっぱいでして。
もうちょっとお待ちいただければと思います。
自分でもびっくり!な感じで楽しく書いてます。
楽しいからといって、進みが早いワケでもないんですが。
ねー……これで進みが早ければねぇw
ということで、HARU当日はよろしくお願いします。
*Vie Durant*undo~duet収録 「ストレイシープ」より
世界の権力はもはや、高貴な血筋や財力を持つ者のものではなかった。
吸血鬼を得たもの。
マスターと呼ばれるそれらの者が、数が少なくなった人々を牛耳っていた。
衛夢とその仲間たちは、その吸血鬼たちを助けるために旅をしている。
だから、衛夢たち自身も何度も危険な目にあっていた。
青空の絵があった屋敷を燃やしたのは、傳英(でぃ)の作戦だった。
人間たちが襲ってきた時、逃げる際に、屋敷に火を放って時間を稼いだ。
衛夢も傳英に言われた通りに、自分の身の安全を確保してから、裏の窓から屋敷の中に蝋燭を投げ込んだのを覚えている。
すでに古く朽ちかけていた屋敷は勢いよく燃えた。
その火を背に、夜の闇の中を逃げながら、衛夢は残してきた絵を思い出していた。
見えるわけではないのに、まるで見えたような気がした。
燃えていく青空。
そんな過去の夜を思い出しながら、衛夢は木の洞から姿を現した。
白く丸い頬、ふわふわとした金髪に、大きな明るく青い瞳。
夕闇に佇むその姿。
まあ、天使様。
それはテンペストよりずっとずっと昔のこと。
衛夢の姿を見た老女が、そう呟いた。
真夜中だった。
衛夢は人の血を求めて、その家に忍び込んだ。忍び込んだその部屋で、老女は寝台に横たわっていた。
人間に姿を見られたことに動じもせず、衛夢はにこりと笑顔を作って、その老女に近づいた。
老いた女は、体を自由に動かせないようだった。
こんな奇跡をみるなんて。
どうか天使様もっとおそばに……。
衛夢は彼女の傍に近寄り、跪いた。
老女がゆっくりと衛夢に手を伸ばす。その手を取った。
冷たい手だった。長く長く生きた手だった。
それでも衛夢の生の長さには、及ばないけども。
老女はどこか衛夢を見ているようで、見ていないような瞳で、衛夢を見ていた。
天使様、わたくしを迎えにきてくださったのですか。
ええ。
衛夢は微笑んだ。
この人、もうすぐ死んじゃうみたい。
吸血鬼の感覚で、衛夢はそれをかぎ取っていた。もしかして、この死の香りに誘われてこの窓に飛び込んだのかもしれない。
衛夢は老女の手に軽く口づけ、そして、歯を立てた。
老女は目を閉じた。その頬に涙が落ちていった。
それも遠い。
ずっと遠い昔の話。
それでも、今の衛夢をみた人間も、天使という概念を知っているのならば、きっと思うことだろう。
まるで天使のようと。
太陽が沈んでいくのを見つめている衛夢を、きっとそう思うことだろう。
「えっと……」
あたりに人影がないことを確かめて、衛夢は一歩踏み出した。
基本的に太陽の光線には弱いが、この程度なら衛夢は活動できた。
ヴァイの子の中で、衛夢は完璧だった。
いや、デュランと呼ばれる衛夢の仲間たちは、完成度が高い子どもたちだ。
このくらいの夕闇ならすでに彼らの時間と言っていい。
衛夢は仲間の姿を求めて、森の斜面を下っていく。
枯葉を踏みしめるたびに、乾いた音がした。
衛夢とその仲間たちは昨晩、吸血鬼狩りから逃れるために、一旦ばらばらになって逃げることを選んだ。
追っ手を撒くためだった。
いつだかの屋敷を焼いた時と同じだった。
基本七人で行動しているが、常に一緒にいるわけではない。
情報を集めるためや、身を隠すために、時々別行動を取ることがあった。
今回は、突然だった。
時影の一声で、瞬時にみな身を隠した。
そして、気がついたら衛夢はひとりだった。
「……みんな、どこいっちゃったのかな……」
呟きつつも、衛夢はさほど心配はしてなかった。
これまで、何度もはぐれたことはあったけど、必ず、みなとは会うことができた。
「傳英君の血水晶もあるしね」
傳英が持っているヴァイから託された血水晶は、吸血鬼の存在を探知したり、能力を増幅させる不思議な石だった。
それは、とても美しい色をしている。
その力を使えば、すぐに傳英は衛夢を見つけてくれることだろう。
今、一番大切なのは、吸血鬼狩りに見つからないことだ。
衛夢は、仲間の気配を感じ取ることより、人間の気配を警戒する方向に神経のシフトをいれる。
見つかりませんように。
僕が見つかったら、みんなも危ないもの。
きっと、助けにきてくれちゃうから。
確信があった。
だからこそ、見つかってはいけない、捕まってはいけない。
衛夢は慎重に神経を研ぎ澄ましながら、緩やかな斜面を下っていった。
木々は葉を落とし、地面はそれらに覆い隠されている季節。
もうすぐ冬がやってくるのだろう。