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【C75新刊】「流浪の民」

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コミックマーケット75 新刊予定

「流浪の民」
2・アンコール設定 加地×日野
(A5/54P/オンデマンド/400円(予))

三年生に進級した加地×日野+普通科四人組友情です。
地日といえども、最後に地日って感じなので、ロマンスなシーンはほとんどありません。

悩む加地、拗ねる日野、驚く天羽、呆れる土浦、笑う森、月森はウィーンって感じです。
あと志水最強伝説。火原もちらっと。
全編加地目線のうざい本になりました。

コミケでは、「天球音楽館」さんに委託していただきます。
http://anzu-sino.sakura.ne.jp/

頒布
2008年12月28日(日)
東3ホール・"エ" ブロック 36a 「天球音楽館」(コルダ・水日)

※三日目西の「ハルカジクウ」では、この本の頒布はありません。

続き

(本文より抜粋)

「あ、ううん。そんな大げさなことじゃなくって……。その、どうして進路希望、出してないの? って谷君と同じ質問しちゃった?」
 台詞の後半は少し冗談めかしたように、香穂子は笑いながらいった。
「うん、谷と一緒だね」
 だから加地も笑った。
「そっか」
 香穂子もごまかすように笑う。そして、続けた。
「……で、どうしてなの?」
「日野さんも出してないよね」
「……うん」
「だから、いいじゃない。僕が出してなくたって」
 ええーー! と香穂子は言った。
「ええ~じゃなくて。じゃあ、僕、今日は急いでるからこれで。また明日ね。日野さん」
 加地は、谷が去った方向に足を速めた。
 多分、日野香穂子は、背後で困ったような顔をしているだろう。
 少し胸が痛んだような気がした。
 でも、自分が提出しない理由はとても彼女には言えないと思っていた。
 

「お前ら、喧嘩してんのかよ?」
「え、僕と誰?」
「日野」
 ポーンとテニスボールが跳ねた。
 昼休みのテニスコートで、土浦と加地は少し遊んでいた。
 以前は、火原和樹も交えて、バスケで遊ぶことが多かったが、さすがに土浦も指を気にするようになったので、今日はテニスだった。
 加地が前の学校でテニス部だったこともあって、土浦は加地とテニスをするのをいやがっていたが、バスケは無理ということで、仕方なく付き合う様子をみせていた。
 元々、土浦はスポーツ好きで、運動神経もよい。
 ぶつぶついいながらも、楽々と弾をうちかえしていた。
 そろそろ五時間目がはじまる。ゲームを切り上げて、コートの片隅にあるベンチに置いてあるそれぞれのジャケットをとりにきた。
 動きやすいように、二人ともジャケットを脱いでシャツ姿だった。土浦なぞはタイまで外してしまっている。
 跳ねたテニスボールは、土浦が持っていたものだ。
 それを、ぱしっと彼は軽快にキャッチした。
「僕と日野さんが? それ、誰情報?」
「天羽に決まってんだろ」
 今日は暖かな日だった。少し汗をかいた。ポケットにはいっていたハンカチを出して、加地は額を拭いた。
「天羽がお前たちのクラスの誰かから聞いたらしいぞ。最近、つるんでないって」
「それだけで喧嘩疑惑?」
「だって……なあ」
 土浦にしては珍しく、語尾をごまかした。
「別に喧嘩なんてしてないよ」
「そうか、ならいいんだ」
「なんだ、土浦、心配してくれた?」
 にやりと加地は笑った。
「そんなんじゃねーよ」
 ばっと土浦はジャケットを羽織った。
「天羽さんも土浦も、日野さんのよい友だちだね」
「は?」
「僕もそのつもりだけど!」
「……そうなのか?」
 怪訝そうに土浦は、言った。
「なに? 友だちでしょ? 僕はそう思ってるけど。あっ、僕はファンでもあるかな」
「いやーー……ん、まあ、いいわ」
 土浦は頭を掻いた。
「なに?」
「なんでもねえ」
「大丈夫だよ。僕と日野さん、今日の放課後は仲良く先生の呼び出しくらってるから」
「そうか、それなら……って、何やったんだよ!?」
「進路希望表を提出してないの僕たちだけになっちゃった」
 加地は土浦のラケットも受け取った。
「……日野は、迷ってるのか?」
 土浦はベンチに座った。片手には音楽科のチーフタイを持っている。赤い色のそれはまだ真新しい。
「うん、多分ね」
「そうか。で、お前はなんなんだよ」
「僕はほら、日野さん次第」

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