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C82新刊「あしたはそのまま青い空」第十話

08 07 *2012 | 発行物::新刊

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C82、なんとか新刊でそうです。

「あしたはそのまま青い空」 第十話

(A5/44p/コピー/¥300)

ずっとお待たせしていた「あしたはそのまま青い空」の本編です。

二月。
もうすぐ落研主催の「落語鑑賞会」が開かれる。
その準備でソラは忙しい毎日だったけど……。

2年半ぶりの本編の発行です。
この事実に自分ながらびっくりしました。

ソラや本部の四人のほか、みっちゃんや他の部の人たちもいっぱい出てくるので長くなってしまいました。
新キャラもいます。

Pixivに冒頭部分をアップしました。

「【サンプル】「あしたはそのまま青い空 第十話」」/「明可」の小説 [pixiv] http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=1316796

また途中部分を↓にアップしています。

待っていてくれていた方がいらっしゃいましたら、ぜひお立ち寄りください。
もちろん9月のコミティアでも頒布予定です。

続き

※本文より抜粋

 明日真がぽんぽんとソラの頭を叩いた。明日真とソラは、十センチ近く身長差があった。明日真が大きすぎるわけではない。ソラが小さめなのだ。
「はあ……」
 明日真に誉められて嬉しくないわけがないのに、なぜだかちゃんとそれを受け止められない自分がいた。
「どうしたの?」 
 ソラの内心に気がついたのか、明日真が不思議そうに聞いてきた。
「なんか腑に落ちないって顔してるけど。私、変なこと言った?」
「いえいえ! そんなことないです!」
 明日真のせいではない。それは判っていた。
「その……」
「うん」
「えーと……準備でばたばたしちゃってて……」
 ソラが言うと、明日真は少し笑った。
「ああ、少し疲れちゃった?」
「はい……はい、そうなんです」
「まあ、終わったらゆっくりできるよ。それまで頑張って」
「はい」
 ソラの返事を聞いて、明日真は自分の席に戻った。
「そうそう、ふれんどのことなんだけど」
 椅子に座りながら、明日真がいった。
「はい?」
 ソラは、明日真の席に近寄った。まるで職員室に質問しにきた生徒みたいに。
「明日から、新聞会のパソコン使わせてもらって作業するから、ここにあまり人がいないかも」
「あ、そうですか……土曜日は」
「土曜日もそうだけど、鍵は開けておくようにするよ。椅子とか持っていくんでしょう?」
「はい」
「なんかお互いばたばたするねー」
「そうですね……でもふれんど、楽しみです」
「うん、楽しみにしててー。ウェブ研のページとか面白くてさー笑っちゃった」
 明日真は楽しそうにそう言った。ソラも早く読みたいと思った。
 そこで気がつく。
 そうか、土曜日は本部の人はみんな忙しい。ということは、鑑賞会には誘えないということだった。
 もちろん、みっちゃんに話したように、部員確保が一番大きな目的だから、すでに部に所属している本部の人はターゲットからは離れるかもしれない。でもそれはみっちゃんもだし(みっちゃんは自ら「サクラとして行くよ」とは言ってくれてるけど)、本当は本部のみんなも来てくれた嬉しいと思っていた。
 と、言うことに今気がついた。
「……どしたの?」
 ソラが急に黙ったので、明日真が尋ねてくる。明日真は椅子に座っているので、少しソラを見上げる状態だ。
 いつも、ソラは明日真を見上げる側なので、なんだか不思議だ。
 少し不思議そうな表情の明日真は、普段より幼くみえた。明日真はもともと年齢より大人びているので、年相応に見えたとも言える。
「……頑張ってもダメかもしれないって」
「は?」
「…………あたしがいくら頑張っても、一生懸命だとしても、ダメだったらどうしようって」
「ダメって何が?」
 首を傾げた明日真の髪がさらっと揺れた。
「みんなにも手伝ってもらってるのに、ダメだったらって」
「ちょ、ちょっと」
 慌てて明日真がソラの腕をとった。コートは着たままだ。
「どうしたの? 今日ヘンだよ。忙しかったから疲れちゃったんじゃないの?」
 そうかも。あたし、疲れてるのかも。そういえば睡眠時間もこのところ少ないし。
「そうかも……しれません……」
「そっか」
 明日真は掴んだままのソラの腕を揺らした。小さい子をあやすみたいに。
「今日は早く帰ったら? もし鑑賞会のことで問い合わせあったら、答えておくから」
「はい……」
「期末だってあるんだし、勉強もちゃんとしてよ」
「はい」
「やだ、私、お母さんみたいだね」
「……はい」
 ソラは頷いた。
「明日真さん、お母さんみたいです」
「……ごめん」
「いえ。ありがとうございます」
 ソラは頭を下げた。明日真の手が自分の腕から離れていった。もうちょっと掴んでくれてもよかったのに。そんな気持ちだった。
「あたし、帰ります」
 コートも着たまま、鞄も持ったままだったソラは、明日真から離れてそのまま本部室を後にした。
 明日真がどんな顔をして自分を見送ったかは判らなかった。見れなかった。
 
ーーーさいあくーーー。
 その夜、とにかく早く寝ようと久しぶりに日付が変わる前にソラはベッドに横になった。
 ソラの家は狭い路地に面していて、この時間はまだ通りから人の気配がする。
 先ほども、酔っ払いのおじさんたちの声が聞こえてきた。
 小さい頃からこの環境だから、どうってこともない。
 それに今夜は自己嫌悪でそれどころじゃなかったから。
ーーー明日真さんにあんなこと言ってもしょうがないのに。
 ソラは布団をひっかぶって、とにかく寝ることにした。

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